玉響
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玉響

ゆき林檎

時代と立場とビー玉の音。

2019年8月23日
ゆき林檎さんの作品はクセになりますね。何回読んでも素晴らしいです。
西荻窪ランスルーで初めてゆき林檎さんを知りましたが、どの作品も長編・短編に関わらず丁寧で深みがあるんです。

こちらはまるまる表題作。大正時代の設定です。男同士で添い遂げる事の難しさや、華族の立場などでなかなか一緒になれない葛藤を描いたストーリーです。

人間不信の麻倉が、最後まで諦めずに恋を成就させることが出来たのは松本のおかげでもあると思うんです。彼が色々な麻倉の言葉をなにひとつ否定せず、応援してくれたからこその巡り合わせもあったかと。
もちろん麻倉と立花の想いもずっと変わらなかったからこその成就でもあります。

ハッピーエンドで本編は幕を閉じますが、最後はあっさりしていると言えばそうですね。一枚の写真で「どうなったのか」を知り、写真が撮られるまでの間は読者の想像に委ねられます。
私はこういうのも好きですが、気になる人は気になるでしょうね。描きおろしで多少の補足があるので(ちょっとエッチ)、試し読みで気になった方は購入しても後悔はないと思いますよ。
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