悩みのない人間なんていない





2019年8月26日
ネットで「生徒ときちんと向かい合う教師の漫画」としてお勧めされているのを見て読みました。色々な方が触れているように、最初は絵柄の独特さに「濃いな〜」と感じていましたが、読んでいくうちに内容とピッタリ合っていて、魅力的な絵柄だなぁと感じるようになりました。主人公は、高校で倫理の授業を担当している高柳先生。授業を受けている生徒たちの悩みに、先生が向かい合うという内容です。決して上から説教をしたり、正論を押し付ける訳ではない。倫理における考え方を踏まえて、自分が「よく生きる」ためにどうすればいいのか導いてくれる、という感じ。冷たすぎもせず優しすぎもしない、そのニュートラルさが心地いい。とはいえ、先生も人間。授業中はあまり表情を動かさず、クールで鉄面皮に見えますが、生徒の行動に動揺したり、照れたり、意外と感情豊かです。でも、そんな所がまた魅力的。生徒は分かりやすい問題児ばかりではなく、一見「普通の子」も多いですが、それぞれに鬱屈を抱えており、真剣に悩んでいます。はたから見れば「どうしてそんなことを気にするの?」と思うような悩みでも、高柳先生は笑ったり馬鹿にしたりせず、いつも真摯に相手と向き合っていて、その姿勢がとても素敵だなと思います。後書きを含め、印象的なエピソードは数多くありますが、個人的には1巻の優等生の女の子(と、その明るいクラスメイト)の話と、三巻の喋らない男の子の話が好きです。悩みが簡単に解決しなくても、そんな自分を受け入れてくれたり、一緒に悩んでくれる人がいるだけで救われることもあると思うので。ミステリアスな色気のある高柳先生ですが、話が進むにつれて、バックボーンらしきものが少しずつ明かされていっており、そこも気になります。今のところ、倫理の選択授業を受けている生徒の中から、一人ずつピックアップされて話が進んでいく、という形式なので、生徒が全員出てきたら連載も終わってしまうのかな。まだまだ続きを読みたいような、名作だからこそダラダラせず綺麗に終わって欲しいような、複雑な気持ちです。でも、とても面白くて考えさせられて、続きを楽しみにしている漫画であることは確かです。

いいねしたユーザ5人