わたしの幸せな結婚
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わたしの幸せな結婚

顎木あくみ(富士見L文庫/KADOKAWA刊)/高坂りと/月岡月穂

優しい旦那さま、どうか彼女を幸せにして。

2019年9月12日
なろう系といえば転生とかのイメージしかなかったですが、普通に心温まるお話で中身もギュギュッと詰まっていて、1巻だけでも楽しめる内容で良かったです。

大正時代をイメージして作られた作品でしょうか。そこにファンタジー要素も加わっているので、日本とは断言せず、近いものを上げるなら遥か6のような世界観でしょうかね。

主人公の美世が本当に不遇な目に遭って生きてきているので、この子には本当に幸せになってほしい、斎森家の人々には不幸になってほしい…なんて思いながら読んでしまいました。
ここまで愛さないくせに、政略結婚とはいえなぜ父親は美世の母親と結婚したのか気になります。
すでに亡くなっている美世の母親は特殊な家の出身みたいですし、そんな人が斎森に嫁いだこと自体が謎なので、これから様々なことが明かされていくのも楽しみです。
能力が無いと足蹴にしてきた子に、実は凄い能力があるなんてことになったら手のひら返すのかな…。
美世を欲しがっていた辰石の家も、美世自身を心配してとかじゃなく、美世の母である薄刃家の能力がほしいとしか言っていなかったので不快でした。

斎森家の娘なのに奴隷として扱われてきたり、今になって薄刃の血がどうのこうのと周りが騒いでいたり、美世は平凡な中の小さな幸せを噛み締めるような人生を望んでいたのに、大変な家に生まれてしまったが為に本当に可哀想です。

そんな彼女を唯一救ってくれる存在となる、久堂家の旦那さまがとても魅力的です。
彼は婚約者候補であった数々のご令嬢を追い出している…という話のせいで最初美世にも誤解されていましたが、彼もワガママ令嬢(斎森家の妹みたいなの)に今まで散々な目に遭わされてきた苦労人。
本当に、普通の感性を持った心の優しい人なんですよね。彼にとっては当たり前のこと全てが、美世にとっては一つ一つが心に染み渡るような優しさで出来ているので、思わず(嬉しくて)泣いてしまった美世を見て私も泣いてしまいました。

美世の実家での事情を知って、最初の出来事を後悔してくれる所とかも、当たり前のようでいて、当たり前のように優しく存ってくれる旦那さまの優しさに本当に救われます。
美世が普通に良い子なのだと知って、彼女に惹かれていく旦那さまとのやり取りが微笑ましいです。
本当に幸せにしてあげてほしい。

1巻ではラストまで也を潜めていた異能設定についても楽しみです。
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