灰の月
」のレビュー

灰の月

木原音瀬/梨とりこ

ライトノベル…?

ネタバレ
2019年12月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み終わってから数日間、ぼんやりこの作品のことを考えてしまって、しんどいからやめようと思っても気づけばまた考えてしまう…を繰り返しました。惣一視点のパートは少なく、上巻の試し読み部分と下巻のごく一部くらいで(どちらもつらい場面…)、あとはほぼ嘉藤視点です。にも関わらず、惣一に感情移入して苦しみながら読みました。嘉藤視点なのでもちろん嘉藤の感情はよくわかりますが、惣一については空白だらけのはずなのに、読者には惣一の感情もめちゃくちゃわかってしまいます。惣一をわざと傷つける嘉藤の言葉に息苦しくなりました。嘉藤に女のように愛されたい惣一と、惣一の気持ちを徹底して受け入れず、雌犬のような振る舞いに落胆すらする嘉藤。永遠にすれ違い続けます。少しでも惣一が報われてほしいと思いながら読み進めましたが、下巻後半、今までの痛々しさを忘れるくらいの苛烈な展開で読むのを諦めかけました…。なんでこんなひどい目に遭わせるんだと満身創痍で読み切りましたが、これ以上ない穏やかなラストだと思います。途中まで手に取るようにわかっていた惣一の感情が、ラストでブツンと途切れてわからなくなってしまうのですが、二人だけの世界で幸せに生きていくんだろうと思います。ある意味、惣一は生まれ変わったんですよね。
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