うそつきあくま
」のレビュー

うそつきあくま

雁須磨子

いい話だけど、心臓が痛すぎる

2020年1月8日
まるで体感してるかのように読ませてしまうから、須磨子先生は本当に天才だし、名作です!
最後すごく良かったけど、もう二度と読めない。内容も確認せずに作家買いしたけど、しんど……私の心臓破けて死んじゃうよ……。
須磨子先生の作品は、ハッピーな内容ばかりじゃないのも知ってるし、そういうところが好きなんだけど、これは上下巻じゃないですか?普段なら単行本一冊に収めてる内容のものを二冊に分けてるということは、ビター(控えめな表現)な部分をねっちりみっちり二倍の質量になっている。いやもう、体感的には三~五倍くらいの濃度に感じた。
最終的なオチのね、優しくしたいから支配したくなる、ていうのはすごく萌えどころなんですけど、メンタル軟弱奴な私はもう二度と読めない気がした。この世から不幸な動物もぎゃくたいも戦争も貧困も病気も苦痛も差別も私の思うありとあらゆる憂いがなくなって、もう全生物にハッピーしかなくなって順風満帆すぎて退屈になったらもう一度読めるかもしれない。けど、今は胸がいっぱい……。
甘利の苦痛も宇郷の苦悩も生々しくて、フィクションの垣根を超えて感じてしまった。名作であるがゆえに胸に迫って苦しかった。
私の感受性が、幸せよりも苦痛を鮮明に感じ取ってしまうタイプのポンコツ受信機だからそう感じるだけで、普通の正常な受信機を持つ人は最後で救われて多幸感を得ているのだと思うけど、しんどかった。
須磨子先生には今後も読者を苦しめてほしい。
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