緑の雫
」のレビュー

緑の雫

あひる/yos

重厚で丁寧な物語

ネタバレ
2020年5月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ ラノベって大抵、ヒーローの地位がやたら高く、圧倒的権力が周りをね黙らせる的なシーンも設定に多いけど、この話のヒーローは若い領主の乳兄弟の騎士という立場で、政治的にはあんまり活躍しません。ノロケもそれほど言わず抑え気味でそこが逆に口下手な武人系でリアルです。ヒロインも、作者さんの魔女の捉え方が現実的なので、クライマックスは除き、植物を蘇らせるという特殊な力を見せびらかすように使うんではなく、普段はアロマテラピーのオイル作りとしてさりげなく使う程度。あくまでもその人となりや気遣い、職人気質な働きぶりで周りを変えていくという感じで好感持てます。ヒロイン最初は森に住んでて、それから些細なきっかけから街、城下町、城内と、活躍の舞台を移していくのだけど、そこでの暮らし方なども細部まで描写されていて、非常に地に足の着いた描きぶり。森の生活も憧れる反面、不便そうなとこもしっかり書き込んであるし、街の市場では両隣の出店者たちとまったり呑みながら夜を過ごしたり、鍛冶屋で仕事道具を作って貰ったりのやりとりも隣で覗いてるように具体的で新鮮です。城で働く際もきついコルセットはめてオシャレするより楽な格好を好むというヒロイン、、ときめき度少ないけど親近感。

異世界なのに生活感がふんだんに感じられて、守り人シリーズ読んでるみたいな気分になりました。ファンタジーだからといって奇跡とか安売りしない、本当に丁寧に作られた物語。
じっくりが好きなひとにはすごくおすすめです。♦
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