春を抱いていた ALIVE
」のレビュー

春を抱いていた ALIVE

新田祐克

タイトルの意味がやっとわかった気がします

ネタバレ
2020年6月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 長い間、このお話を香藤くんと岩城さんの二人の愛の物語として読んできたけど、そうではなかった。これは最愛の人との死別を含む、1人の男性の半生の物語。そう思って読まないとつらすぎる。昔から『春を抱いていた』って過去形のタイトルが疑問だったけど、この物語は岩城さんの回顧録だったんですね。『春』は色事の意味じゃなくて、最愛の人と過ごした暖かい時間、香藤くんの残した桜、そして香藤くんそのもののこと。大好きな大好きな、20年以上追い続けた春抱き。私の青春がまた一つ終わりました。岩城さん今年で50歳かぁなんて思っていたら、新刊そして終幕と知り、楽しみに読んだ最終巻。心の整理がつきません。二人はおじいちゃんになるまでラブラブしてると思っていたのに、こんなに早く二人のお別れがくることを知った今では、コミックスで全巻持っているけど、しばらくは、いやもしかして永遠に読み返せない。もう読まないかもしれない、でも手放せずにずっと本棚にいてもらう、そんなマンガになりました。大好きな作品だからこそ率直な感想を書きます。これがハッピーエンドだという人もいるけど、私はそうは思えない。『末長く幸せに暮らしました』のほうがよかった。二人で大往生で終わったほうがマンガで描かれた今までの波乱が説得力を持つはず。特殊メイクでおじいちゃんになった岩城さん見たときの香藤くんの反応に、あぁこの二人は老いてなお愛を深めるのだと思っていたのに。香藤くん、岩城さんを遺して先に逝くのはやっぱり悔しかったよね。死ぬにしてもなぜ突然死?岩城さんが後追いしたほうがハッピーエンドだとすら、私は思ってしまった。政治家転身、香藤くんは岩城さんが役者を辞めることを喜んだのかな?法律の制定なんて壮大な話じゃなくて、ささやかな幸せを二人で末長く積み重ねる結末であってほしかった。思うことがたくさんありすぎる。このラストを受け入れるには、彼らとの付き合いが長くなりすぎました。でも新田先生の緻密な表現力のおかげで、香藤くんの死を受け入れている自分もいて、このラストをもって本当に唯一無二のすばらしい作品になったこともわかっています。新田先生以外ではこんなマンガ描けません。香藤洋二の死を含む、岩城京介の人生を見せてもらえたと思えば、少しだけ心の整理がつきそうです。今はまだ無理だけど、いつか読み返したい。新田先生、お疲れ様でした。ありがとうございました。
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