前科者
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前科者

香川まさひと/月島冬二

タイトル…

ネタバレ
2020年7月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「保護司」では、普通過ぎて、ダメだったのかな?

主人公は、まさに「世の中における究極のボランティア」とされる、まだ若い「保護司」さんです。

役所からは「先生」と、持ちあげられるも、報酬ナシ(わずかながらの「手数料」が出ることもある。)、交通費ナシ(担当予定の、出所が近い受刑者に、刑務所や少年院に面会に行く時の実費が出るだけ。)で、面倒を見る対象は「元犯罪者」であり、だれもが改悛して出てきたとは限らない。本当に、どれだけの人徳があってやっているのかと思うほどです。

全体として、平均年齢は、60歳と少しで、女性は4分の1だとか。そうすると、本作の、まだアラサーくらいの独身女性が保護司を務めているというのは、かなりのレアケースといえるでしょう。

序盤は、出所者よりも、その周囲の人物に相応のクズがいて(元のヤ〇ザ仲間でもない、近所のワル爺)、身の危険さえ感じることもある主人公… 本当に、こんなわりにあわないこと、なんのためにやっているのか…

幸いにも、どの指導対象者にも「恵まれ」?、自身も成長していく様子が描かれていきます。

一方で、どんなに改悛しても、「前科者」への風あたりは強く…

また、その、一方で、犯罪者により、家族が二度と戻らなくなった被害者側も出てくるなどして、読み進めるには、かなりの精神力が必要と思います。

絵柄に、少々、特徴があり、また「現実には対象者とこんなことにならんだろう」という描写もありますが、人間の心の深さを抉る、佳作といえるでしょう。
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