課長 島耕作
」のレビュー

課長 島耕作

弘兼憲史

稀代の「クズ人間」の出世物語です。

ネタバレ
2020年7月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 実際に、それなりの立場で社会活動をしている女性たちからは、この方、かなり評判が悪いのです。

まだ、昭和50年代という、はるか昔の物語であるとはいえ、とにかく、簡単に社内外の女性と情交をかわします。

すべて女性と合意のことではありますが、いくら「ふんいきイケメン」な上司が相手だからと、こうも簡単に、うら若き女性達が、二次会にカラオケに行くような感覚でベッドインする様子には、この時代はそんなに娯楽がなかったのかと、理解できないところです。

初期の頃は、とにかく、出世していくために、敵が多いです。中には、かなりたちの悪いやつもいるのですが、なにぶん、このスケベサラリーマン、けっこうお間抜けで、脇が甘いため、すぐに致命的な弱みを握られたりします。

それを解決するために「どうすれば?」と条件交渉すると、大概、ヒヒジジイどもが「お前のオンナを差し出せ」と、これまた、この時代ならではの吹っ掛けをしてきます。

普通の感覚の持ち主ならば、毅然として断るところですが、この方は「そういうわけなんだ。でも、僕は…」と、視線チラッチラで、そのときの情交相手に話します。すると、聖母のような女性たちが「わかったわ」と、その敵キャラに抱かれに行きます。

そして、事後にすべてが解決すると「すまない」で済ませて終わりです。そして、またミラクルにより出世です。犠牲になった女性は、自分から身を引いていくと、いう、まさに男性目線の極楽展開が繰り広げられます。

こんなことの繰り返しで、自分は順調にのし上がっていく一方、理不尽な切られ方をする同僚や部下がいても「決まったことは、仕方がないことだね。」と、いっさいの救いの手もさしのべません。

本当に、時代と、そこそこのルックスに恵まれただけの人なのでは?と、深く考えさせられます。

今なお「相談役」として連載は続き、日本の経済界の要職にもつき、人格者たる好々爺として活躍していますが、とんでもない、いったい何人の女性を踏み台に、犠牲にしてきて、その椅子に座れているのかと、怒りさえわいてきます。

言われているほどの男ではない、でも、こんな男でも、運だけで、出世していける時代があった、と、女性管理職の方々の反面教師のテキストとして、大おススメの、評価「5」を差し上げたく思います。
いいねしたユーザ10人
レビューをシェアしよう!