青に、ふれる。
」のレビュー

青に、ふれる。

鈴木望

人混みの中でも君だけが僕を導く光だった

2020年7月8日
生まれつき顔にアザのある瑠璃子と、相貌失認症(他人の顔が判別できない病)に生まれつき苦しんでいる神田先生の物語。

こうして文字にすると重い題材に感じますが
明るく頑張って生きていて、先生の相貌失認を理解した上でサポートできる瑠璃子にとても好感が持てますし、先生もイケメンで少し素で天然っぽい所が可愛かったり、先生らしく瑠璃子を支えようとしてくれてる姿がカッコ良かったりと
普通の少女漫画としても良いキャラクターだと思いながら読めます。

この作品は特に、心にコンプレックスがある人ほど響く題材だと思います。
瑠璃子は、自身のアザを「気にしていない」と周りに嘘をついて強がるほどに、心の痛みは増していくばかり。
これまで瑠璃子の心を本当の意味で救ってくれる人は現れず、両親も心が弱く自分が1番正しいと思っている人だった為に、瑠璃子自身が強がるしかなかったんでしょうね。

そういった意味では、先生も全く同じ境遇と言えます。
先生の両親は裕福でプライドの塊みたいな人達だった為に、上手く生きられない息子を理解するどころか疎ましくさえ思っていたのだろうと推測できます。

アザがあることをそれほど大したことだと思っておらず知らずのうちに瑠璃子を傷付けていた先生と、先生が実は「ズルい」と言われることにトラウマを抱えているとは知らず安易に「先生はズルい」と言ってしまった瑠璃子。
互いに相手を無自覚に傷つけていて、接しているうちにそのことに気付くんです。

2人とも心が優しいからこそ、全部自分一人で抱え込んで、全部自分のせいにして傷ついていて。
似たもの同士が出会って初めて、「そんなに自分を責めなくてもいいのに」という思いが、自分自身に跳ね返ってくるんですよね。

心の傷を比べるものではないですが、正直相貌失認症を抱える先生の方が遥かに辛いと思います。
作中での苦しむ描写も先生に重点が置かれているように感じました。
誰の顔も分からなくて、一生懸命悩んだあげくに「失礼ですがどなたですか」と訊いた言葉が相手を傷付けたり、その相手の反応で更に自分が傷ついたり。

顔が分からないことが、彼の人生にとって普通なのが悲しいというか。
恋人を作っても、彼女が普段と違う格好をしたら分からなくなってしまうなんて…。

今の先生にとって唯一無二の存在である瑠璃子と、幸せになってほしいです。
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