このレビューはネタバレを含みます▼
始めのうちは次はどんなヤバいことが起こるんだろうとドキドキハラハラしっぱなしで生きた心地がしませんでしたが、本当に丁寧に作り込まれている話だなぁと思いました。登場人物達にそれぞれ大事な役割があり、セリフや表情から一人一人の感情が伝わってきます。愛憎はもとより苦悩や葛藤、喜んだり胸を打たれたりが繊細に表現されていて、読んでいると脇キャラでもその人の人生が浮かび上がってきます。ただのドロドロ愛憎劇ではない厚みのある物語なので何度読み返しても胸に刺さるものがあります。
復讐に燃える人の周りには同じような人が集まるのか、この物語には恨みつらみを抱えた人ばかり出てきます。自分の苦しみは、自分以外の何か(誰か)のせいだと思っている人のオンパレードです。しかし全ての真相が明らかになって全体を見渡すと、結局誰が被害者で加害者なのかが分からないという不思議な結果となりました。まぁ、ほぼほぼ今日子が悪いんですが(笑)亡くなった方も含めて全員、視点を変えれば加害者でもあり被害者でもある。これには「作者様スゴイな~!」と感動しました。
人間って、傷ついたり傷つけられたり、時には理不尽な思いもするけれど、自分がどういう時にどう感じるのか、本当に望んでいることは何かに気づけたら、自分を幸せにするために次はどう行動すればいいのか分かります。復習にエネルギーを使うのはもったいない。ただ、徹底的にやりつくすことで辿り着く答えもあるので一概には言えないですが。
愛憎で一杯だった七桜や椿に変化が見え始めると、それが他の登場人物達に波及するような感じで、最後は素晴らしい幕引きとなっていました。誰かを許せないままであっても、きっと彼らなら、この一連の出来事で経験したことを、これからの幸せのために活かしていけるのではと思います。
(追記)大抵の番外編は本当にオマケといった感じの、読まなくても本編の理解には差し支えないものが多いですが、この番外編は絶対読んだ方が良いと思いました。今日子のその後に「ちょっとみんな甘くないか?」とも思いましたが、今日子の穏やかな笑顔を見た時、なぜだか納得している自分がいました。前を向いて進んでいこうとする登場人物達の姿がしっかり描かれていて希望を感じて清々しかったです。