銃座のウルナ
」のレビュー

銃座のウルナ

伊図透

どんなに痛くても、世界は美しい

ネタバレ
2020年9月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ ミツバチのキスを読んだ時も、絵画のような心象風景の美しさと台詞の鋭さに感嘆しましたが、今作はそれに加えてさらに、風景描写の美しさに感動しました。戦場や日常の中に挟まれるこれらがあるからこそ、主人公の故郷を愛する心が、愛し続けてしまう心が真に迫ってくるんだと思います。戦場となる雪原の美しさもまた、「故郷の美しさ」であるわけで……それぞれの心の基礎にある大事な場所を守る意思や力の相克が痛々しく切ない…でも世界は人の業など知らず空も水も炎も大地もただ美しい。だからこそその中に生きる人の営みが同じ人間には強く身に迫ります。ずっと心に残るだろう作品にまた会えてよかったなと思いました。
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