このレビューはネタバレを含みます▼
これまで沢山のラブコメを読んできましたが、中でもこの、情熱的で可愛さもあるギャップ萌えな男の中の男・源造と、美しく気高く強い女の中の女・恵の、ひたむきで純粋な物語は屈指だといえる名作。
特に萌えでもエロでもないのに恵の神秘的な魅力は凄い。読み進める度に、綺麗で可愛くてしなやかで...本当に女の中の女に見えてくる。狙った絵柄でもないのにここまで登場人物に雰囲気が出せる上に、ギャグも秀逸で、胸を打つ名言の数々に感動的なシーン、全体的にあっさり描かれてる割に緻密な伏線と回収も、さすが西森先生!
序盤では、実はめぐ団の全員が魔本関係なく自分で自分に呪いをかけており、強い男や伝説の悪魔、普通、変態、武士にならなければならない自分...。そんな他人や自分が認識する自分像に押し殺していた所を、恵と再会し告白したのを機に呪いが解けた源造に続き、他の人達も段々と解放され、最後は恵も...というお話。読み進めていくと、冒頭から恵の本当の目標は魔本でなく源造で、霊能力者も「探し"もの"は学校にある」、小悪魔も「"元"に戻る」という言い方が鍵。更に無理難題な願いは聞き入れない小悪魔が、序盤で源造に"恵が自分に惚れるよう"願われた時、あっさり引き受けてた演出もニクイ。中盤、勝手にキスで戻ると思い込むほど元々の発想や言動が乙女な恵は、初めて守ってくれた源造を今度は自分が助けたい思いと、本来の女らしく生きたい憧れから「女の中の女になりたい」と願ったわけだけど、男だと思い込む事によって、この両方は叶ったのだと。小悪魔の粋な計らいですよね。そうして最後やっと命がけで源造を護り抜くことができ、出会った時から絶対的な愛をもつ彼に、自分も男らしく好きだと応えることで、恵の呪いが解ける所は感動的!直後まるまる1Pに描かれたキスシーンは少年誌に残る名場面だと思います。
総じて、めぐ団全員に共通する「誰かの為に諦めない勇気を持つ」所から、大切な人を守る本当の強さをもつのに男も女も関係ない、自分がどんな人物に見えるかも関係ない。大事なのは、その一歩の勇気をもつことだと作者は一貫して伝えたかったのでしょう。証拠に、この題名。天使は性別がない、中性的な象徴。男女関係なく憎めない愛おしさを表現したこの題名を作中でそのまま使った人が、ただ1人います。天使な小生意気。今読むと、源造の絶対的な愛がたっぷり込められているように感じませんか?