鬼は笑うか
」のレビュー

鬼は笑うか

木村ヒデサト

純文学風味は好きだけど後味が悪い

ネタバレ
2020年11月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ エンタメとして読めなくもないけれど、性犯罪や性への目覚めを真っ向から取り扱う純文学風味の強い作品。そういう作風は好きだけれど、引っ掛かるところも多かった。妊娠したかもっていう重たい同級生の相談なのに、名前を単純にバラしたのは頂けない。あと、生理っていうのは相手にとって過去のトラウマであるはずなのに簡単に口にして、からの、妊娠検査薬使えよという押し付け。高校生は知識としては妊娠の経緯を知ってるはずだから、願望で突っ走ったにしても怖い。
どうしても、生理や妊娠が物語の中でキーワードだから、いつもそれに関する話題を入れなくちゃという考えに囚われすぎて人物像の整合性がとれていないような。
主人公は、昔は同情でいてあげたけど今は本気で好きだと告白していた。そうだろうか?昔の場面では、性犯罪に巻き込まれて自分を挑発した相手に対して、自分でも戸惑いつつ欲情していた。もっと複雑な気持ちがあったはず。だからこそ物語に深みがあった。感動の場面で、「同情」に矮小化させるくらいなら無理に語らせなくても。
救済が完結したのは嬉しいけれど、なんとなく人物像にモヤモヤする後味が良くない読書でした。
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