半壊の花【シーモア限定特典付き】
」のレビュー

半壊の花【シーモア限定特典付き】

早寝電灯

想いを馳せる。大切な人へ。大切な場所へ。

2021年1月3日
作者様の作品を読むのはまだ3作目ですが、その中ではこの作品が1番好きです。4つのお話が入っている短編集。作者様の独特な雰囲気と、後に残る余韻と、読後の満足感と、全て良かったです。4作どれも好きでしたが特に印象的なのは表題の双子のお話と、4作目の稲穂のお話。半壊の花は親でさえ間違えるそっくりな双子と、双子の事を初めて見分けることが出来た友人との3人のお話で、どうにもならないもどかしさが胸を締め付けます。それぞれに想いがあり、秘めたその想いを知ることができたとき・・。涙と共にすうっと重みが抜けるような読後感の悪くない余韻ある終わり方になっています。4作目は稲穂の続く道をこっそり手を繋いで歩いた、あどけなさの残る少年達の淡く儚い恋のお話。離れてしまっても、時が経っても、自分の1番綺麗な場所にいつまでもいつまでも宝物のように残る、色鮮やかな記憶。遠い故郷の稲穂のあの道の匂いが香ってくるような描写で、ギューーーっと胸が苦しく、目頭が熱くなりました。再会の物語でもあり、こちらも読後しばらく幸せな余韻が残る、大好きな作品でした。満足度が高い理由がもう一つ。なんと4作全て後日譚があるんです。嬉しすぎた。おススメの作品です。
いいねしたユーザ5人
レビューをシェアしよう!