死役所
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死役所

あずみきし

ネタ枯れしない舞台設定の妙

2021年1月5日
有名なバンドのとある曲に、「命が終わる要素は数えきれないほどあるが、命が始まるきっかけはひとつしかない」という旨の歌詞があるのですが、それを思い出すような漫画でした。文字通り人生は人の数だけあり、また死に方もひとえに「○○死」といっても千差万別なのだということ。死ぬときに本当の自分の価値が炙り出されるということ。死は生と断絶されることであり、死んでしまえばもう一切現世に関われないこと。生死というのは作者の自己満足と面白さのバランス感覚が試される題材だと思いますが、作者の主張と物語の面白みとがしっかり両立できている作品だと思いました。17巻も続いているのにネタ切れ感のまったくないところも、その人の人生を描くというスタイルによるところだと思います。ただ、とはいっても100巻も200巻もこのまま死者一人ひとりの各論を続けていけるとは思わないので、今後どうなるかも期待したいところです。最後に、初期のシ村さんは自分勝手な死者にたいしてもフーンと流しながら腹で笑うところがありました。が、最近は読者の代弁だったり、嫌みというよりもはや喧嘩腰の発言をしたりとかなり雄弁になってきています。シ村さんには読者の憂さ晴らし役ではなく、あくまで死役所のいち職員として、淡々としたストーリーテラーの役割をお願いしたいな…と思っています。
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