俺物語!!
」のレビュー

俺物語!!

アルコ/河原和音

泣ける笑えるすっごい笑える温かい和み系話

2021年1月10日
恋物語で友情物語で高校生活物語(猛男の)。タイトルが、これ以上ピッタリするのは他にないと思う。強い印象とストーリーを充分感じる絶妙さ。「俺」も「物語」も「!!」も、この組合せが上手く表している。

ピュアで、凛子をとても大事に思う猛男。目つぶったら虫が止まった、というシーン(5巻目ですよ!?)はぶっと吹いた。こういう微笑ましくも真っ直ぐな猛男の心持ちと、ちょっと鈍いところ、人物描写に男性のいやらしさが無くてそこも良かった。凛子は幸せ者だ。
日常の中で、恋心や級友や家族、大切な幼馴染みとの人間関係、どれも凄く笑いの中に心が動かされるものが入ってる。エピソードが、漫画にありがちな笑える展開をする。だから余計猛男キャラが際立つ。
「人っつうのは みんな心の中には あついかたまり みてえなのは持っていて」というのが良かった。
砂川シーンはどれもジンと来る。押し付けがましくない友情表現で、互いに素晴らしい友を持った二人がいい。私は他に愛さんのターンも気に入り、特に8巻の織田との成行きを楽しんだ。
長期化連続物にありがちな突然の新顔投入が少なく、身内やメインキャラの興味の対象や交友関係でなるべく繋いでいたのも、ストーリーにまとまりがあった。11巻の田中はそういう意味では 当初、唐突に登場、こなれ感の無い存在だったように感じた。
絵は好みでないが、笑いと泣きの要素がこの配分だからこそこの絵がストーリーにピッタリだったと思う。猛男の外見に妥協があったら成立しないと感じた。実写化時点での主演男優に寄せた顔の絵、原作の河原先生作画のメイン3人の顔の絵、馴染みが無く、戸惑わなかったといえば嘘になる。既にアルコ先生の絵が原本なのだ。
13巻のサイズ感が丁度いい展開だったが、結末に向かってカーテンコールよろしく登場人物総出演のとき、文字だけのコマが有り過ぎたこと、大コマ多過ぎたこと等々、残念な点もあった。それでも「何でふつうの男みたいなこと言ってんだ」に面白味があったのは、本作を貫く猛男の個性やストーリーの主旨が活かされたからこそ。
転校生、横恋慕、遠恋の試練など、この種のストーリーによくあるエピソードも、彼等らしいやり方で動いて行く描き方に、自然な感じした。

皆がうまく行きすぎる訳もないし、「猛男」の「俺物語!!」だから仕方ないが、盛り立て役は盛り立て役だったか、と感じてしまった。スナの恋物語無しとは。
いいねしたユーザ8人
レビューをシェアしよう!