Artiste(アルティスト)
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Artiste(アルティスト)

さもえど太郎

読後に温かさと前向きさが残る良作

ネタバレ
2021年1月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ タイトルの通り、様々な芸術に携わる人たちのその道だからこその葛藤や、素朴だけど本人にとっては大きな悩み、そしてその先に見つける光が、とても温かく優しく描かれています。

才能に溢れているせいで傷つき自信を失った人、何事にも動じず飛び込んでいけるようで何か一つを探している人、親切で面倒見がよかったせいで傷つき人との関わりを遮断してしまった人、仕事はきっちりこなせるものの臨機応変な対応や
察するという行為が出来ない人、
そして、名を馳せるほどの脚光を浴び天職で適職の生きがいを失わざるを得ない人。
様々な人の側面だけではない部分に触れられている作品です。

主人公ジルベールは料理の才能は天才的だけど、それ故に人との関わり方が難しく、臆病で俯きがちで影に隠れて生きているような人でしたが、新人バイトのマルコとの出会いをきっかけに自分に対して人に対して、少しずつ前のめりに歩んでいく姿を主軸に、ジルベールの周りの様々な芸術家たちにスポットが当たっていきます。

マルコ自身も、ジルベールに出会い変わった部分があるのだろうなと感じました。
序盤ですが、対照的な2人が互いに憧れていたということを伝え合った時に「じゃあ、きっと2人ともそうなんだよ」と話すシーンは、胸に迫るものがありました。
わたしも、まだどこへでもいけるのだろうか、と。

人と関わることは傷つくけれど、それでも残った繋がりは、きっと何か温かいものを導いてくるはず。
誰かを想い、そのために動いたことは、きっと伝わる。

苦い面にもしっかりスポットが当たりつつ、それをふんわりと覆って前に導いてくれるような、芸術に関係する人は勿論全ての人の心に染みるものがある作品だと思います。
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