このレビューはネタバレを含みます▼
初めての作家さん。私は好きな作品でした。歩道橋で見かける幽霊、三森と同居する事になった育。三森は毎夜23:45に歩道橋に行き、自分が死んだ瞬間を繰り返しています。心理描写と言葉選びが秀逸な、作者様の独創的なモノローグで紡がれていく作風がとても好みでした。ただ語りが多めで詩的なものもあるので、直接的な表現を好む方は苦手かも、という印象。1巻は割と王道展開で、三森の事をなんとかしたいという思いと、繋いだ手を離したくないという矛盾する想いが丁寧に描かれます。育が勇気を出し、明るい未来を想像できるラストとなっていますが、2巻Reでは三森視点のお話に切り替わり、その後の現実と悲しい拒絶が描かれていきます。三森が抱える自分が知らない自分への嫉妬。細かい心情描写もあり、三森の気持ちはわかるのですが育の気持ちを思うとやるせない。それでも未来を見据えてお話は進みます。繋いだ手を見る度に思い出すであろうその記憶も、穏やかなものへと変わっていき、読後はとても爽やかな気持ちになれました。ほぼえっちの描写などないですが、Reの書き下ろしでは甘い2人が見られます。