違国日記
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違国日記

ヤマシタトモコ

これ以上はないかもしれない

2021年2月9日
こんな先品を描ける人にはなりたくない、とさえ思うほどに心、というか絶対に触られたくない唯一守ってきたピンポイントを狙うかのようにガンガン、ガツガツと抉られる。「域」としてはもはや漫画ではない。

描き手が丸腰で挑んでくるから読み手も丸腰で読むしか選択肢がなくて、だからひたすらに痛くて、なのに許され癒される。これが天賦の才なのか。

己の凝り固まった常識や上辺を取り繕うつまらない思いやりなんていう溜まりに溜まった垢を容赦なく剥がし、削り取り、柔な素肌で向かい熱を触れ合わす。

人生を左右する「I witness you」は過去にだけにあるものではない。今、も、未来にも、限りはあれど必ず選択を迫られるその瞬間にどちらかを選べるチャンスはまだある。ただ歳をとると選択の猶予期間が短くはなるんだけれど。
選んだ選択のその先は、良くも悪くも私だけしか見ることの出来ない道であり風景。
だから私は今日も呼吸をしてきた数と同じだけ抱えてしまった砂漠と例えられた孤独に嬉々として水をやり続けようと思う。人生で1番出会えて良かった作品。

勝手に諦めて死ぬな、誰も。絶対に。そんなお話。私はこの物語に出会うために壁にぶつかり人を傷つけ、また傷つけたことに苦しみながら生きてきた。少なくとも今生きていてこの作品に出会えた奇跡に感謝します。
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