初恋、カタルシス。
」のレビュー

初恋、カタルシス。

鳩川ぬこ

モヤっとしたものを含めて心に残る1冊

ネタバレ
2021年2月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人を好きになるけれど、性的欲求を持たない一騎と初めて同性を好きになった(のだと思う)唐木田のお話。少し調べてみましたが、ノンセクシュアルやアセクシャルは、当事者の中でも解釈に幅があるのですね。やはり、一括りにできるものではないですよね。
私が、この作品を読んでまず思ったのは、唐木田の無神経さや言ってることとやってることの違いがイイなです(良い悪いの"イイ"ではなくて)。好きな人の性格や特性や性癖やその他もろもろって、好きになった当初や付き合い始めの頃って、とっても気になって、相手に嫌われないようにって思ったり、我慢したり、気を遣ったりするけれど、慣れてくると、自分のわがままを言いたくなったり、自分の気持ちを分かってもらえないとイラッとしたり、全部を受け入れてほしくなったりするよなーと唐木田を見ながら思い返しました。(要求や我慢がエスカレートすると話は別物になります)
一騎がノンセクであるという前提があると、唐木田の言動は、一騎のセクシュアリティに対してとても無神経で相手が傷つくよなって思ったりしますが、唐木田は相手のセクシュアリティに関わらず、無神経なことを言っちゃうような人なんじゃないかなと思えてしまいました。要するに、唐木田はあまりセクシュアルなことに頓着がないのではと(自分が同性を好きになったことにも悩んでる風でもなかったので)。だから、「いっきくんは、性別いっきくん」と言えてしまうのかなと。もちろん、性別とかセクシュアリティに関わらず、一騎が好きというのが大きいと思いますが、そういう無頓着さもなくはないのかなと。勝手な解釈ではありますが…。とは言え、当事者(一騎)にとっては、自分のセクシュアリティはとても重要で、唐木田に罪悪感さえ抱いてしまう。「好き」の気持ちと唐木田がバケモノに思えてしまう狭間で、どんだけ苦しいだろうと想像するだけでも、この本を読んでよかったなと思います。唐木田が無神経でも、バケモノに思える行為を求められても、それでも一緒にいたいと思える特別なものが唐木田にはあって、一騎は唐木田と一緒にいることを選んでいる。それは唐木田も同様で、この二人の未来はこの二人にしか選択できないんだなー、お互いが一緒にいたいと望む限り、二人で居心地の良い関係を築いていけたらいいなと願う、そんな読後です。読むきっかけをくださったフォローさんたち、ありがとうございます!
いいねしたユーザ10人
レビューをシェアしよう!