伯爵家の事情
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伯爵家の事情

尾方琳/デボラ・シモンズ

頁が多いので読み応えはあるが今ひとつ

ネタバレ
2021年2月22日
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ヒロインの妹を妊娠させたのがヒーローと思い込んだヒロインが、男装でヒーローの元に乗り込み、脅し用の銃で誤って本当に打ってしまい誘拐して治療することになるというはじまりな貴族の男女の恋物語。
しょっぱなから侯爵ヒーローを伯爵と書く誤字につまずくが、運び込まれたヒロイン邸で、ヒーローがヒロインの正体を探ったり、家事を手伝ったり、ヒロインの窮地を察して救おうと色々手を回すところは非常に良かった。
が、いざ結婚のくだりになったらヒーロー別人化。無茶苦茶ヒロインに執着してるのに、おれは愛には屈さないぜ!と、人目のあるところではヒロイン放置。そのくせヒロインが男に囲まれてるのを見て嫉妬してはベッドで発散。なんだこのキモい男は。ヒロインが耐えきれなくなって家を出ても自分は間違ってないと頑固。前半の気配りできてたヒーローどこに行ったんだか。ヒロインも愛のない結婚なんていやとか言いつつ次のページで即結婚で、がっかりさせられた。
ヒーローは愛に臆病だったというオチをつけてたが、そうするにはヒーローの背景描写が弱すぎ。せめてヒーロー両親が完全政略の冷え切った夫婦だったとか、ヒーローが頑なになる背景が欲しかったかな。政略でも仲良い夫婦は当時でも皆無じゃなかったろうし。展開が微妙に苦しい。
あと、気になったのが、ヒロイン家の諸々。両親が亡くなってるのにヒロイン姉妹が伯爵名乗れてるのが変。イギリスは基本男系相続で女は一部を除いて相続権がないはずなんだけど。血を辿っても後継がいなければお家断絶、財産は国が没収じゃなかったか? また財産管理が庶民だったヒロイン母の弟になってるのも謎だった。ヒロイン母個人の財産ならわかるけど、伯爵家の財産なら庶民の叔父が管理者にはなれないのでは? よくて父方親族だろう。そもそも庶民が伯爵夫人になれてるのもアレだが。この作品の時代設定が謎。19世紀でも前と後で違うしね。
前に読んだハーレクインのヒストリカルも身分周りで不可解なのがあったし、ハーレのヒストリカルが時代考証ちゃんとしてるという認識は改めたほうがいいのだろうか。残念。
調べたらシリーズもので、「シャーロットの結婚」(今作のヒーロー友人夫妻の話)→今作→「悪魔と乙女」(最後の子爵のヒーローの友人の話)→「最後の子爵」(シャーロットの妹がヒロイン)の時系列。
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