このレビューはネタバレを含みます▼
私の世代でスポ根漫画と言えば、バレーボールの『アタックNo.1』かテニスのこの作品でしょうか。どちらもリアルタイムではなかったと思います。今作品は1973年~1980年までに描かれたもので、まさに『THE 昭和』ですが、古き良き作品は時代を越えて受け継がれて行くものです。最近この作品のアニメの声優さんの訃報があり、思い起こして読みたくなりました。子供の頃から幾度となく、読みふけった作品は色褪せる事なく良作ですね。
いわゆる『汗と涙の熱血スポ根』にとどまらず、深い人間ドラマです。鬼コーチに見いだされ、厳しい特訓と周囲の妬み嫉みに耐えながら、泣きながらも歯を食いしばって立ち上がる姿はスポ根そのもの。
その中で生まれる信頼だとか絆は、誰も入り込めない師弟愛があります。そして、岡ひろみを熱く見守る藤堂との恋模様は、今時にはない純粋なもの。だからこそ、余計にキュンとするんですよね。ここまでなら、普通のスポ根漫画なんです。けど、ひろみを発掘し、厳しく育て上げた裏には、宗方コーチの壮絶な計画があり驚愕に落ちます。プレイヤーとしての選手生命を絶たれた宗方コーチの命懸けのテニス人生です。もうそれを知った時のショックは、言い表せないほどです。確かな絆が生まれ、岡ひろみと言う選手が世界に羽ばたける力を持つほど、宗方コーチを亡くしたひろみが再起不能の危機が大きくなります。それを見越しての、引き継げるコーチとの約束。自分の死期を悟り、あらゆる想定と準備をした宗方コーチを思うと、ずっと胸が痛んで涙が止まりません。これは師弟愛なのか?愛にはちがいないんですけどね。そして、ひろみを大きな愛で支え続ける藤堂も辛いですよね。だけど、壮絶な人生に幕を閉じた宗方仁の生き様、死に様は、テニス界を支えるあらゆる人に影響を与えたと思います。後進に道を開いたのでしょうねぇ…もう感涙。宗方コーチから引き継いだ桂コーチとの絆も必見です。
全巻ぶっ通しで読みふけりました。涙しかありません。いつの時代に読んでも、名作で素晴らしいんです。
ちなみに上戸彩さん主演でドラマ化されました。