美しいこと
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美しいこと

犬井ナオ/木原音瀬

ショートストーリーでだいぶ救われました

ネタバレ
2021年3月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1巻を読んだ後、レビューを見て、「何やら消化不良な結末なのかなー。続きが書かれている原作(小説)は電子では読めなそうだしなー」と2巻の購入をためらったままになっていましたが、先日のクーポンを利用してようやく読みました。1巻から色々突っ込みどころがあって、割と冷静に読んでいたのですが、2巻終盤、踏切のシーンからですね、持っていかれました。松岡さんの「逆手にとらないで」に込められる気持ちが痛すぎます。ようやくスタートラインに立てた感はあったけど、それでも、巻末のSSSがなかったら、結構キツかったです。でも、1巻で、真実を知った寛末さんのショックは相当なものだったとも思うんです。葉子が女性ではないと気付くきっかけはあったはずなのに、気付けないくらいのめり込んでしまっていたところに、実は男でしたなんて告白されたら、裏切られた感と喪失感と不信感で病んでもおかしくないくらいだなと。いくら中身は同じ人間だと言われたところで、「はい、そうですか」とはならないと思いました。図ったわけではないけれど、寛末さんをズタズタボロボロにした松岡さん(自分もかなりのダメージを受けた)の、2巻で葉子を思い起こさせないような外見になり、再会に葛藤と苦しさを抱えながらも、新たな未来に進もうとする姿は、とても誠実に思えました。そして、もともと松岡さんは、寛末さんの内面に惹かれるような、ちゃんと人を見れる人だからこそ、性別だけで受け入れてもらえない虚無感は計り知れません。それでも寛末さんを諦めきれないところにも、松岡さんの人柄を垣間見ました。そんな風に、全編通して、同性愛者ではない2人の気持ちが本当によく現されているなと思いました。その2人の気持ちは二度と交わることはないと思われたのに、気持ちの奥の方で求め合っていることを自覚した2人が(寛末さんも本当は答えは出ているんじゃないかな)同じ気持ちになれる先があるなら、やっぱり読みたいなと思います。
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