逢縁カタルシス
」のレビュー

逢縁カタルシス

大島かもめ

従順さとしたたかさ

ネタバレ
2021年4月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者様買いですが、とても久しぶり。相変わらずなかもめ先生の空気感です。淡々としているようで、心の機微が繊細で、小さなくすぶりから徐々に熱を帯び、やがて大きな熱情が沸き上がる。そんなイメージの大正浪漫にすっかりご満悦です。
時は大正、舞台は大阪・薬種商家。私も関西人なので、柔らかい船場言葉も心地よく響きます。
震災の影響で仕事を求めて東京から流れてきた近藤。無愛想ながらも、生真面目で熱心な近藤に目をかける若旦那の竜次。ある時、近藤の秘めた想いを知ってしまう竜次ですが、そこに近藤の計算があったのか、なかったのか…
竜次の隠された過去を知ったあと、近藤のしたたかさが見え隠れした気がします。単純に竜次の心の重石を取り除きたかったのかもしれませんが、津島に対する想いに決着をつけさせたかった。それが愛ゆえのものかなと。
竜次が心を清算し、近藤に向き合えた事は良かったんですが、もう少し落ちてく様を見たかった気もします。近藤が居てくれた事で強くなれたし、自分の気持ちに正直になれたのだから、幸せですよね。共に助け合い新天地で頑張って欲しいし、寄り添って年を重ねていって欲しいです。良かったぁ。
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