ラムスプリンガの情景
」のレビュー

ラムスプリンガの情景

吾妻香夜

生き方を問われるようだった

ネタバレ
2021年4月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 絵が独特ですが、表紙で足踏みしてしまっている方は騙されたと思って読んで欲しい。アーミッシュという戒律の厳しい信仰宗教(実在する)を軸にした物語で、ラムスプリンガという一生に一度だけ彼らがハメを外せる期間にスポットを当てて描かれている。人生の岐路に立たされた時のそれぞれの選択は、胸が苦しくなるほどに切ない。そして何がすごいって適当な脇役とか当て馬として生まれたようなキャラは一人もいないところ。ここからはネタバレになるのですが、ダニーとクロエの行動と心情が実は凄く練り込まれている。ダニーは兄(ジーン)がアーミッシュを抜けてしまったことがトラウマになり、自身は両親を傷つけてはならないというプレッシャーもあったと思われる。フォモフォビアに近い状態にまでなっていたが、納屋でオズ
にキスするシーンから察するにダニーは本来ゲイで、本当に愛していたのはやはりテオだったのでは、と。クロエの言動からも不安や嫉妬が見て取れる部分がある。ただ、クロエはそんな感情を小出しにしながらもダニーを支える姿が綺麗で「恋は素晴らしい呪い」という部分はガッツリ印象に残る。みんながみんな凄く優しくて切ない、胸の奥が熱くなるような話だった。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!