3人目のNANAがいたら共感できたかも





2021年4月12日
「天使なんかじゃない」「ご近所物語」「Paradise Kiss」など類い稀なる才能で読者の瞳を輝かせ続けた少女漫画界の大御所・矢沢あい先生の代表作の1つ。本作でも光が射し込む透明感溢れる描写は非の打ち所がないほどに美しく、スタイリッシュな人物像や映画の様なドラマティックな構成に何度読んでも心踊らされます!ただ、物語としての完成度や軽快さは前作より低く感じられ、どちらのNANAにも感情移入が難しいというのが率直な感想。特にハチこと奈々の中毒的な恋愛依存性、言動もいちいち男性によってコロコロ変わったり、被害者意識が強く思い込みが激しかったりと次第に苛立ちが募る一方。もう一人のナナもサバサバした性格かと思いきや、ヤンデレで重暗く、実はいちばん女々しいのがツラい。初読だった10代の時は同じ地方出身で上京する身だったこともあり、都会での新生活や華々しい業界、お洒落な人達への憧れが重なってありましたが、今読むと物語自体が薄っぺらく感じ、理解も共感もし難い少女漫画的展開と発想だなぁとしか思えません。要するに芸能界という小さな世界の、トラネスとブラストという更に狭い狭いコミュニティの間で急速にくっついたり離れたりする少年少女達の物語で、中盤から昼ドラ的なドロドロ感満載。相関図も非常に複雑になり、過去編未来編と頭もちんぷんかんぷん。また長い番外編でしかキャラクターの背景を深く掘り下げられないというのもどうなんでしょう。全話の冒頭と最後には必ず二人のNANAによる意味深なポエムが入り、最初はハラハラドキドキしながら考察しましたが、こうも長く伏線回収されないままワンパターンでクドく繰り返されると、もうどうなってもいいやと興醒めせざるを得ません。今は先生が病気で療養中のため長期休載されてますが、果たしてキチンと完結されるかが疑問。1日も早い回復と復活を期待します。胸を張って不朽の名作です!とは言いづらく、青春時代の一冊として紹介させてください。

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