このレビューはネタバレを含みます▼
花街の一画でお針子をする月(ユエ)が庭にいると、突然塀の上から箱に詰められた人形の頭が降ってきます。落としたのは老舗の人形屋の御曹司・英隆でした。英隆は、人形のように美しく整った月をモデルにしたいと懇願しますが、月の住むのは花街であり、ここに来るのは赤い花を挿した客で、客は花を買うのが決まりであること、それができないなら二度と来るなとキッパリと言い渡されます。月もまた、かつては買われる花であり、今も花街を囲む塀から外に出ない生活をしていました。育ちの良さからくる天然な英隆に次第と惹かれていく月ですが、男娼としての経験からくるトラウマが邪魔をします。かつての赤線地区という舞台(昭和30年代くらい?)に、個性的な絵柄とモダンな背景処理とが独特の世界観を作り出しています。英隆に心を許すようになってからの月の表情が、少年らしさとともにクルクルと変化し、あどけなく可愛らしいです。