囀る鳥は羽ばたかない
」のレビュー

囀る鳥は羽ばたかない

ヨネダコウ

音もなく醸造される心

2021年5月17日
何度読んでも、新しい切なさが胸の内をよぎる。
薄暗く雨で濡れた夜の新宿。湿気を帯びたアスファルト。それとは対照的な水たまりにうつるネオンの灯。
切なさは、矢代と百目鬼の恋愛感情だけではない。何というか登場人物それぞれにおける人生のとか、大人のとか、どうしようもなく生きることの切なさなとか。
人は「自分だけの切ない気持ち」をみんな持っているだろう。悲しみのような前触れのない、密やかにあとをひく、あの感じ。
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