嫌われ神子の8年間
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嫌われ神子の8年間

伊達きよ/北沢きょう

King Gun の「白日」のような話。

ネタバレ
2021年6月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ ※がっつりネタバレしていますのでご注意下さい。
主人公の圭は15歳の頃に異世界に拉致されたが、必死に努力し、やがて救国の神子になるという異世界転移物です。どちらかというと山あり谷ありというよりは、淡々と物語が進んでいく感じです。
ですが、私は敢えて「転移」ではなく「拉致」と言います。
まだ15歳という子供を、身勝手で自分達本位な事情で突然拉致しておいて、正しく導く事もなく、スポイルして都合が悪くなると突き放すという、まったくもってけしからんクズどもの住まう世界など滅んでしまえばいい。
まだまだ他人に依存する事を当たり前に生きてきた子供の圭を身勝手に拉致し「自分の正義」を振りかざす愚かなこの世界の人間たちは、自分たちの愚かさを棚にあげて未熟であるが故に自分本位な行動をしてしまう圭をみて勝手に幻滅し冷遇していきます。
圭が本当にかわいそうでかわいそうで泣けてきました。彼の人生は彼だけのものでもあるのに。
そして、最悪なことに圭にとって唯一の心の拠り所になるはずの守護者のテスでさえ身勝手。
自分の正義を振りかざし押し付ける嫌なやつです。本当に腹が立ち不愉快でした。
それなのに愛していたと言うのですよね。
愛する者よりも自分の正義のほうが大切だったのかと考えると悲しいです。
そしてテスは自分の愚かさに気付き、行いを悔い、深刻で取り返しのつかない事態に愕然としているのでした。
そして話は進み、黒幕もあっけなく退場して途中から何だかあっさりと纏まっていくのですが、なんだかんだいって、結局最終的に1番辛く魂レベルで痛い目に合うのはテスなのですよ。。。でもいくらテスが痛い目にあっても少しもスッキリすることもザマーと思う事もできません。テスがあまりにも痛々しく辛くて辛くて。
覆水盆に帰らずなのです。きっとテスは一生自分を許せない事でしょう。それが本当に憐れで辛く切ない。愛する人をいまだに苦しめている事を後悔し続けるしかないのか、ハッピーエンドに影をおとしています。
長々とお付き合いいただきましてありがとうございましたm(__)m彼らの物語をどうぞご自身の曇りなき眼でご高覧いただけましたら幸いですぅ。
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