このレビューはネタバレを含みます▼
『恋が落ちたら』『ワンダー・ボーダー』『オーバー・スコール』上田先生の作品は、どれもじわじわ心に染みてくる。どれも好きな作品ですが、不定期連載の『恋が落ちたら』続編を早く読みたいなぁ。
この作品は短編集ですが、廃校となる高校を舞台に繋がるオムニバスです。短いながらも、まとまりが良く、心に残る余韻が心地いいんです。「失うことははじまるということ」このテーマにぴったりな作品集です。
『エンドスタートライン』:廃校が決まったものの、愛着と思い出を残したグラウンドに通う早川。そこで出会った男は幽霊?夢を諦めた幽霊と走り続ける男の絆。気持ちと温もりを抱えたままの別れと再会がとても素敵で、新たなスタートを思わせる閉めでした。良かったぁー。
『建築する夕暮れ』:廃校の学校を壊しながら、ふと見上げる男の回想。夕陽に染まる学校の準備室から見える先生。想いと好きな写真集を残して卒業した吉沢。思わぬ再会は壊している学校で…
何年経過したのかわからないけど、先生は『残したもの』を離さず持っていてくれたんだね。なんて素敵な再会ラブでしょ。
『ふたり追いし、かの未来』:廃校から転入して来た木下と転入先の学生・黒宮。木下の失恋は、募らせた想いを廃校の瓦礫の中に埋め、側にいる黒宮と二人、楽しい未来に希望を馳せて。やっぱりここから青春リスタート!
『クロスライン』:3つのオムニバスの後日譚で、三組少しずつ絡めながら、それぞれのCPの幸せな恋が見られて良かったです!余韻を感じながらの後日譚で、読後感が清々しい。
あと、『フロム・グリーンキッチン』の高野目線の短編が収録されていて、単行本読んで好きな方は、こちらも読んで欲しいですね。
すごーく、いい短編集でした。好き。