とつくにの少女
」のレビュー

とつくにの少女

ながべ

神話のような宗教のような哲学のような

ネタバレ
2021年6月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ その人の持つ引き出しに合わせて、いろんな解釈が出来る作品だと思います。いろんな解釈が出来るが故に、割り切れなくてむつかしいところも…。

魂なき器(黒の子)は、欠けた魂(心)を求める。
心を持たぬ彼らは、常に飄々として悩みもなく苦しみもない。
心を持つせんせはシーヴァと出会うことで、歓びと愛しさを感じると同時に、苦しみ絶望する。時に他者をも巻き込んで、残酷な結末を迎えたりもする。
それら様々な出来事を経て、全てを受け止め、受け入れた果てに訪れる平安。その完全さ。

かつて内と外は一つだったと物語は言う。
黒の子は、全き一つの源である「母」から生まれ落ち、母から欠け落ちた魂を求めてさまよう。彼らが探す魂は、母の物=源を同一とする彼ら自身のものでもあるのだろう。
欠けた何かを求めてさまよう姿は、この世に生まれ落ちる我々自身の姿に重なっているのかもしれない。
シーヴァ(器)とせんせ(器)は、同じ魂を二つに分け合うとこで、奇しくも黒の子達が求める境地にたどり着いたのか。

最後、真っ白な光の中で、「アルベルト」と名を呼んだのはシーヴァのようでもアリ、せんせ自身のようにも見える。
もはや彼我の差はなく、相手は自分であり、自分も相手である…そんな状態なのかな。
安らぎと穏やかな調和。
でも少し、ほろ苦い。
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