このレビューはネタバレを含みます▼
全134ページの短編集です。
「兄貴とヤス」30Pはシーモア内で電子配信もありますが、こちらはイラスト入り、ブラウザ読み可、続編入りといった違いがあります。2007年に書かれた作品のようですが、時代の古さなどは全くありません。体格の良さ喧嘩の強さが取り柄のひたすらに兄貴を愛する大人しい部下・ヤス×男娼あがりの綺麗な顔をしたヤクザ幹部・羽鳥の組合せです。羽鳥は男娼の時から「俺の右腕として育ててやる」と贔屓してくれている羽鳥より上の立場・大物の総会屋に身体を開いたりします。羽鳥の頭イかれた感のある誘い方が最高です!従順ワンコのヤスが本能を剥き出しにさせられる様が堪りませんでした!
「一度だけでも」40Pは妻帯者憧れの上司×可愛い部下の組合せです。お互い惹かれあっていたのに立場上何も出来ずにいた二人が酔って過ちを犯すところから話が始まり、お互いに嫉妬したり、不倫関係はダメだと倫理観に苛まれたりと二人の心の揺れ動く様がとても良いです!
「潮騒の褥」50P。褥とは布団のことです。甥っ子・啓弘×凄惨な過去のせいで歪んだ性的価値観を持つ叔父・静生の組合せです。孤独な静生の心を12歳と24歳の啓弘が二度救います。その話の持っていき方が秀逸です!全て理にかなっている。12歳なら性的なものに対して興味もあれば心の蓋をすることもあります。その心理を利用した巧みな書き方で前半読者を騙すという……!静生って嫌な奴!と私はすっかり騙されました。啓弘視点の話ですので、啓弘と共にその誤解を解き、後の展開。啓弘も最初は性的な行為から静生との距離を縮めますがそのうち本気になっちゃう。静生の過去を知ってもなお、静生の側にいる覚悟を決めてくれます。でもその間、え?まさか静生の過去の男?まさか死なないよね?と読者は振り回されっぱなしの展開。怒涛の展開にしてやられました!可哀想な幼い頃の過去とか許せる方是非一読してみて下さい。かなり作者に騙されますから。
「ヤスと兄貴」13Pはヤス視点での続編です。読んでみて下さい。