続 IN THE APARTMENT
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続 IN THE APARTMENT

絵津鼓

重なっていく2人の道

2021年6月10日
続編です。もうーー毎回思いますが絵津鼓先生はどうしてこんなに感情の深い所にすんなり入り込んでくる作品が描けるんでしょう。読めば読むほど静かに刺さってくる丁寧な心情描写が本当に素晴らしいなと思います。
前作でお互い少しづつ前を向けるようになってきた杉本と妹尾ですが、変わらず名前の付かない関係が続いています。

フラフラしつつも笑顔でいる事が多い妹尾ですが、彼の小さな身体のなかには、深く深く張り巡らされてちょっとやそっとじゃ引き剝がせない根があるんですよね。
手を伸ばしたくても伸ばせない。簡単に切り離せない苦しい過去の影。
杉本もそれが分かっているから、振り回されつつも、流れに任せて目いっぱい引き出しを探りながら寄り添います。
杉本自身も、自分の気持ちが何なのか、どうしてあげたいのか、何度も何度も自問自答しながら、あきらめずに。
妹尾の絞り出すかのような無言の涙に、私も涙がこぼれてしまった。
杉本本当にありがとう泣

私はモアザンを読まなかったから過去を手放せそうなエピソードに良かったねと思えるけれど、読んでいたらあの夫婦が登場する事をどう思うだろう、嫌悪するかもしれないな、と思いつつ・・妹尾が良いなら良いんだよね!と全てはそこに落ち着きます。
頬を赤らめて照れる妹尾が可愛い。

絶え間なく続いていく2人の前に開ける道が、ずっとずっと重なっていますように。
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