兄が遺した恋のゆくえ
」のレビュー

兄が遺した恋のゆくえ

どうか幸せに

ネタバレ
2021年6月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者様買いです。『よつもじ』が穏やかな日常の中のカップルを描かれていたように、この作品も穏やかで優しさが溢れています。オメガバースなのですが、その特性は背景にあるとしても、エチは一切ありません。そういうオメガバースがあっても不思議じゃないストーリーで、違和感を感じさせません。

αの一樹は、兄の親友(と思っていた)幸人に懐くほど慕っていた。βである兄・晴樹と恋人のΩ・幸人の関係を知り、いつしか一樹の感情が違うものとなり…
病に倒れて、幸人を残し逝ってしまった晴樹を思い痩せ細る幸人が痛々しくて辛いんです。優しい幸兄ちゃんの面影はなく、心を閉ざしてしまったかのようです。人を避けるのは、もちろんΩである体質ゆえですが、それでも殻に閉じ籠るようで切ない……

兄の恋人を心配しながら、どうしても側に居たい一樹。そこには、弟としてではない感情もあり、一樹の心情を思うと、これもまた切ない…

ただ見守るだけでない、本当の目的。
兄が遺したもの。
兄の遺した愛。
遺志を継ごうとした一樹。
その事実を知った時、涙が止まりませんでした。
なんて深い愛。
晴樹が遺した想いも深いし、幸人を想う一樹の愛も深い。涙。涙です。

倒れて消え入りそうだった幸人の顔つきや表情が、一樹と居る事で、だんだん穏やかに変わって行くんですよねぇ…温かい気持ちにさせてくれます。

晴樹の遺志を、幸人もまた継ぐと心に誓い…
素敵な結末が、書き下ろし最後の4ページです。
セリフのない優しいシーンが幸せを運んでくれます。良かったぁ。泣いたぁ。

作者様曰く、「顔色悪めの弱々しげな男の人が好き」だそうで、確かに悪いんですが、そこで絵柄で引いてしまうと良作を逃していたんだろうなぁ、と思いました。
いいねしたユーザ7人
レビューをシェアしよう!