誰かのことを好きなだけ 分冊版
」のレビュー

誰かのことを好きなだけ 分冊版

藤緒あい

きっと誰のことも好きじゃない

2021年6月19日
甘い展開は殆どないので、読む人を選びそうな気がします。明るくなりたい時にはオススメしません。でも、カップルの中での「すれ違い」に悩んだり「なんか違う」と感じていたり、お互い理解しあったり受け入れ合ったりするっていうのはどういう意味なんだろう、と考えている人には、刺さる内容だと思います。「すれ違い」を描く漫画は多々あれど、大体、遠距離などの外的要因が多く、本作のように自分自身の性格と態度が問題だ、という点を深く掘り下げる作品は珍しいので興味深く読みました。この気付きから好転していくとしたら、各登場人物がどう変わっていけるかに尽きるので、大人の成長物語としても興味深い。難を言うならば、モノローグみたいな台詞が多く、その多くが自分語りか社会派の意見で、少しくどい。キャラがそれぞれ違うようでいて、全員この自分語りをするのはリアリティーに欠ける。結局は「誰のことも好きじゃない自分が可愛い人々の物語」に見えてしまうのは残念。それでもこうした内容を描くのはチャレンジングで、それぞれの人格の再構築を興味深く見守った。
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