パンドラの箱の鍵





自分を受け入る、他人を受け入れる、自分を偽る、他人に合わせる。どこかに属して生きていく(それも無理なケースへさらり言及があり、彼らのポジションに想いを馳せると、さらりとしていても胸が苦しい)。
SIDEーAを振り返ると、主人公達の短いある一時期の事が、その後の彼らの人生の大きな屈折点を与えたと、ここに至って、改めて実感。
淡いストーリーなんかではないのに、読みはじめた時には、思いもよらず、で読み手のこちらは斜め上にも感じる展開。ここ迄第一印象をひっくり返すのにたやすいプロセスをたどってなかった、と。軽く描いているようで、どうしてどうしてコトの成り行きに伴う彼らそれぞれの道のりがひととおりでないでこぼこで、読後感はずっしり。
絵は私の好みではない。特に崩しの各場面。社会科教師の歪んだ企ての場面の彼の顔も受け入れがたい。
しかし、涼しげに人前で普通ぶっているさまと、その犯罪者顔とのギャップは、だからこそ見せ方としてそれが生きている、とは言える。
私はそれに、絵が好みでないという理由では星は下げない。
この特異性、強烈なメッセージ性を評価したい。
三者三様の母たちもよく描かれていて物語世界のうねりが外向きに広がり、パンドラの箱は親の前に明らかとなるのだが、特筆すべきなのはフトシの母。息子を、強すぎて優しすぎる子に育てたという、彼女の肝の座りかたが堂々としていてスカッとくる。
蛇足ながら知恵袋というサイトに夢野家の太郎と次郎を混同しているらしい人がベストアンサーとなっていた。あの知恵袋サイトではよく誤回答や珍回答、噛み合ってない回答が散見されるが、残念過ぎる。「書き下ろし」と表現されているが未読の教師編ではないだろう。

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