【寂寞を棄て春を待ち】シリーズ
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【寂寞を棄て春を待ち】シリーズ

天野瑰

副題は三流(以下)ですが、物語は逸品

2021年6月22日
(読み放は2021/6/30までです)
「映画みたい」と称される作品は少なくないですが、この作品の描写は映画そのもの。たとえば映画では、画面の中のストーリー進行とは無関係に人物の独白が淡々と流れるシーンがよくありますが、この物語にはその手法が多用されます。
同時に、過去と現在、さらに少し先であろう場面の映像やセリフがストロボのように点滅し交錯します。
カメラのピントが合っている人物はクッキリと、そうでないものはぼやけて見える、あのコントラスト(対比萌え)がコマの中でも再現されています。
人物の心情表現も然りで、最も知りたい部分には触れずにスルッと画面が移るのも映画的。いつ恋に落ちたとか何故惚れたのかとか、ともすると心情に強い光を当てて影も消えるほど隅々まで照らし出す作品が多い中では異色な部類。何でもかんでも説明されるのは興醒めという方はお好きなはず。結構難解ですが、そのわからなさも醍醐味です。わからないな~と反すうしている間ずっと作品を楽しんでいられますし…ね?
あぁ、再会のシーンが無音で進む美しさときたら…。
1945年1月、ドイツ--5月に降伏することを知る由もなく、第2次世界大戦下に愛しあい生き抜こうとするナチ党武装SSのマイヤー軍曹とローベルト中尉のお話です。
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