このレビューはネタバレを含みます▼
自分のことは自分が一番よくわかってる、と信じていたのは幾つの頃までだったかな。実際は全然違っていて、口に出してみて初めて「あ、自分ってこんなこと思っていたんだ …」と自分の気持ちに気づくことも結構ある。このお話の中で母親が息子に対して不用意な発言をした時、言われた本人よりも早くそれをたしなめ、兄を弁護する言葉を口にした自分自身に驚いていた弟のように。
「良い子に育ってくれたと思っていたのに」という発言は「子どもは私が主役の人生劇場を幸せにするための脇役」と考えている印象もあって、親が子に言うワーストフレーズ上位に入っていそうだが、そうは言っても母親の多くは、男だろうと女だろうと息子の相手は大なり小なり気に入らないものらしく、その心情自体は責めきれないな……と周りを見渡してそう思う。今回は男だという口実があって余計反対しやすかっただろう…と言っては皮肉に過ぎるかな。
嵩大は、長男としての役割以外にも孫としての役割、兄としての役割、育ての親的・主婦的な役割などたくさんの役割を生きる中で、我慢に我慢を重ね気を張りつめ続けてきたから、なな君に甘えさせてもらえてやっと息がつけたんだろうな…と、ラスト、彼の屈託のない表情を見てそう感じた。
最も胸打たれたのは弟の最後のモノローグ。「本当は皆に言いたい。格好よくて家族思いでゲイの 僕の自慢の兄の話」--うん、伝わったよ、史くん。私も10年前に亡くなった自慢の兄の話を君にしたいな。
…って、ん!?BLには何一つ触れずじまいか…!