ヨルムンガンド
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ヨルムンガンド

高橋慶太郎

武器商人と旅をした。

2021年7月5日
若き天才武器商人ココ。彼女は白と黒の世界でグレーの上を歩き続ける化け物だ。そんな武器商人と旅をするのは、武器を憎む一方で武器の頼もしさを知ってる少年兵ヨナ。ヨナがココの部隊に入隊するところから物語は始まる。ココの部隊には凄腕の傭兵達が揃う。元デルタフォースや元フィンランド軍高級将校、元対テロ狙撃手、元自衛隊等々。彼ら一人一人に物語があり、群像劇的な側面もある。軍事用語が飛び交いミリタリーファンも楽しめると思う。もちろんそうじゃない方も。キャラクター一人一人は大変魅力的だが、一方で感情移入等はかなりしにくい。彼らは実在の人物かのようなリアリティーさがある。よくこの作品と比べられるミリタリー漫画がある。裏社会の商人という点が似ていて、そちらのほうが人気は高いかも。何故人気かといえば、そちらはかなり漫画的でドラマチックで登場人物達はヒーローのようなのだ。一方こちらは、全くそういうのはない。彼らは武器商人。死の商人。作中銃撃戦を繰り広げる敵対者に対し、登場人物が言う言葉がある。曰く「銃声など屁のようなもの。住民の皆さんにごめんない、恥ずかしい」と思いながらやるものだと。つまり、彼らは自分たち傭兵が恥ずべき行為をしてる、そう認識しているのだ。ココ達の部隊には根底にそれがある。彼らには人を殺して飯を食うことのリアリティーさがあるのだ。武器商人が平和な世界を作ると言った。彼女は彼女の方法でそれを成し遂げた。その結末について自分は答えが出ない。人類がその時何を選択するか本当に分からないのだ。11巻で綺麗にまとまっていて面白い。アニメも2期分で描ききってくれた。漫画に忠実かつよりキャラクターを魅力的に展開していてとても好きなアニメの一つだ。武器商人の話だし、人は死ぬし、人を選ぶ話とは思うが、武器を通して世界を見れるのが面白い。普段日本にいると全くわからない感覚だ。映画のロードオブウォーが好きな方なら好きかもしれない。逆にあの映画を退屈と思う方にはおすすめしない。最後に作中好きな言葉がある。曰く「矛盾したことを言っていいのは武器商人だけ」と。世界平和を願う武器商人という滑稽さが小気味良い。
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