鍵のかかる部屋
」のレビュー

鍵のかかる部屋

紺野けい子

意味も理由も本音もないけれど…

ネタバレ
2021年7月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ フォローしている方のレビューで、たった15ページというお話に興味を持ちました。
学生時代の親友だった沢村と萩野が卒業以来8年ぶりに再会することで始まる物語。学生の頃は、互いにゲイであることを知らなかったという2人、でも、当時から萩野は自分の気持ちに気付いていただろうと沢村は考えます。その思考は、現在進行形の文体だなって私の胸に引っ掛かります。「気付いている」「8年前からずっとだよ」。沢村だけでなく荻野もか…。さらに、萩野には現在進行形で恋人がいます。けれど、恋人が寝ている間に2人は鍵のかかる部屋へ…。
フォローさん仰るように、レビューも様々で、色々な読み方ができると思いますが、個人的には、青々しかった2人も8年という年月をかけてそれぞれに色付き、その一つの過程として再会し、2人の関係としては、これで円熟なのかなと思いました。個々としてはこれからも熟していくけれど、2人としての先は、ないかな…と。もう、この鍵のかかる部屋でおしまい。
「好きだった」と過去形に変わる文末。本音をさらさず、意味も理由もないように思える行為は、ともすると現在進行形のようにぶり返したあの頃の感情を消化するために必要だったのかも。消化はできても、「思い出」として残るのですけれど…。とても味わい深いラストだなと思いました。
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