わだつみの嫁取り
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わだつみの嫁取り

文善やよひ

わだつみとは海の神様、独りぼっちの神様は

ネタバレ
2021年8月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人魚に愛されて不老不死となったキヨこと雪之助(きよのすけ)と彼を愛した人魚のお話。59年ぶりにキヨと人魚が再会するシーンから始まります。昭和初期(庚午は昭和5年)真面目で人の良いキヨは薬局を営みながら、不老不死という人魚の呪いを解く為に、近代化していく街でひっそりと生き続けている妖怪達とも昵懇にしていました。59年間、やはり不老不死から逃れる術を知る為に、仲間の人魚を探して海を流れていたという人魚ですが、仲間は見つからず、予定より1年早くキヨの元に帰って来たのでした。
やがて、他の妖怪から人魚の呪いについて、キヨは自分の知らなかったこと、人魚が教えてくれなかったことを聞かされます。
愛する者達の死を看取り続ける辛さ、独りぼっちでいることへの恐れを超えて、人間という弱い存在でありながら最後の一人を見送るこを決意するキヨの人魚への深い愛が胸に迫ります。永遠に続く茫洋とした未来ではなく、二人が肩を並べて歩む、希望ある未来が海の彼方に広がるラストシーンが美しいです。昭和モダンな風俗も華やかな人外ファンタジー、独特の世界観を楽しめます。
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