このレビューはネタバレを含みます▼
題名で損してると思います。すごい純愛でした。税に苦しむ農村の窮状を訴えたいと京にやってきた睦月は新政府の要職に就く者の暗殺を企てる旧士族の仲間になります。同志の顕世と同じ家で暮らすことになり、共に京の町を歩き、話をするうちに睦月は顕世に惹かれていきます。睦月の心がとてもくもりがなく清らかでした。骨太なストーリーで非情な場面もありますが、読後感はとてもよかったです。登場人物に血が通っているというか、印象的なキャラが多くてお話に深みがありました。幕末の志士で1番好きな木戸孝允が出てきてうれしかったです。司馬遼太郎先生の「花神」の木戸孝允像と重なりました。参考文献の量が多くて明治時代のことをすごく調べられたのだと思います。「寮生諸君!」と「夜間逃避行」を読んだことがありましたが、この本も含め全部よかったのでこれから他の作品も読んでいきたいです。
2016年6月 総271ページ 挿絵あり。