恋愛をしてもセックスをしても、すべて虚しい少年のためのポルノグラフィティ
」のレビュー

恋愛をしてもセックスをしても、すべて虚しい少年のためのポルノグラフィティ

小野塚カホリ

BLジャンルだからかとても尊さを感じました

ネタバレ
2021年8月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ (読み放から)小野塚先生の短編集。 表題作「ロマン対像」主人公は少年 零ニ、彼の想い人で同級生の中村丈陽、その父親(彼にとっても片想いだったかつての同級生の息子が零ニ)のお話。
物語の台詞をその通り読めば、告白すら出来なかった中年ロリのお話だと嫌悪するかな…と感じました。(評価も低めですし…)ただ2人の年齢をそれぞれ見ると、ちょうど思春期と更年期になるのかな?…と。それは必ず通らなければならない人生の、何かもう一度生まれ変わるくらいの様なもので、思考も生き方も変えさせられる苦しみが伴なうものの様に思います。物語の最後に見せられるそんな2人の情事。…零ニにとっては少年というものに終わりを告げ大人になる為の行為。丈陽の父親にとっては、今までの人生を振り返ると同時に肉体的な衰えも感じ、いずれは不自由な日常と死というものが来るんだ…という老人になる覚悟を決める為の行為…。
そんな父親にとっても、想い人に瓜二つの顔をした零ニにとっても、その期間を通過する為には互いが必要で…。描写は普通の情事でしたが、そんな事を思いながら読むと2人のそれはまるで儀式の様で…。生を貪る様なイン靡(インビ)な情事だな…と感じました。(インの字が使えない…💦)「好きだ、中村…」とやっと零ニが自分の気持ちを言葉に出来た時…「待っていたよ」とその言葉の感情と熱量を、中年期男性は通過する為に食した様に感じました。( エロい…😩 )恋人とか…互いの幸せな未来…等と感じる関係性とは違う、その期間だけの関係性。それは零ニにとっては瞬きくらいの一瞬かもしれず、社会人になったら新しい記憶に埋もれてしまうぐらい、小さな事なのかもしれない…。だけどいつかこの同級生の父親が亡くなった…と耳にした時、零ニは何を思うのかな…と想像すると、とてもエロかったです。きっと胸に広がる焼印の様な情事を思い出すのかな…と。若さをキラキラと感じ始めた中年期の人間がする行為は、だからか逆に人間臭いな…と思ったりしました。
初めて読んだ作者様の作品、凄く良かったです。学生時代はこれより少し前…なので、似たジャンルだと魚喃キリコ先生の作品を読んだり。(電子化されてないのが残念) 岡崎京子先生の与えた影響の凄さもまた感じながら読んでいました。他短編…「黄金と薔薇」の最後…電話で語らうそれぞれの笑顔が、淋しく幸せそうで…何とも言えず切なかったです。
いいねしたユーザ13人
レビューをシェアしよう!