獣王陛下と砂かぶりの花嫁
」のレビュー

獣王陛下と砂かぶりの花嫁

小石川あお

愛しかなかった優しい物語です。

ネタバレ
2021年8月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 初読み作家様です。とっても温かみを感じる優しい絵柄が素敵です。神獣の血をひく王様は雪豹の姿を持ち、先祖返りでは母方である人型の姿にもなります。雪豹の姿は気高く雄々しく美しいし、人間の姿となっても透明感のある美しい青年です。王様が探し求める『運命の番』。殺されそうになっていた砂かぶりのキツネ君を助けた時に、探していた番に出会った…という展開。
みんなとは毛色が違うと、砂をかぶって毛色を隠していた砂かぶり。王様に助けられて、『紅藍』と名付けられ初めて優しさや温かみを知る紅藍が、可愛いくて愛おしい。王様が紅藍を運命の番と疑わない真相と、紅藍の幼少期の辛い過去と合わせて、少しずつ見えてくるのですが、一人毛色の違う孤独感は切ないし、傷ついた『ねこちゃん』を必死に助けて守ろうとした優しさと強さに、心が震えます。
そうなんです。何があっても幼い頃から、自分の事よりも、目の前の困ってる者のために、自己の身を削るように相手を守ろうとする紅藍に涙します。どこまでも自分の幸せよりも、誰かのために自己を沈めてしまう紅藍がたまらない。そんな心根の紅藍だからこそ、王様も愛して止まないんでしょうねぇ。
そんな王様も、過去に裏切られるという哀しみを持つ孤独な王。純粋な紅藍だけが、安らぎなのかもしれませんね。王の上手く立ち回れない不器用さで、すれ違う二人もまた切ないんです。それでも、紅藍は王様の側に居られる幸せだけが全てだったのに…王様の幸せだけを願う紅藍の身の引き方が、胸を締め付けます。
いつか巡り合う運命の番のために、国を発展させて来た王様。もう二度とその手を離さず、紅藍だけのために、王様のためだけに幸せになって欲しいと願います。
砂かぶりのキツネ君、辛い事もあったけど、君は決して邪魔者などではなく、確かに心配されたり、愛されていたんだよ…って幼い頃のキツネ君に言って抱きしめてあげたい。泣いちゃうね…

初めての二人の交わりは美しく、何度も愛おしそうに『こうらん』と呼ぶ王様が素敵でした。
はぁ、良かった!めちゃくちゃ良かったです。すーーーっごい、良かったです。
この作者様の他の作品も読みたくなりました。
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