このレビューはネタバレを含みます▼
3人の登場人物が妖獣•鵺のように縺れ合い絡まり合う様相を描く作品です。
主人公のニシキは、マフィアに始末されるところを黒崎組の次男•マオとその愛人八坂に拾われます。αであるニシキは、Ωの母親が獣のように本能に蹂躙される姿を見て育ち、本能に支配されることを恐れ嫌っています。餓死寸前のところをマオに拾われた八坂は凶悪で奔放なΩで、マオを運命の番と信じ、崇め、マオの為に死にたがってさえいます。そしてそのマオは、愛人だった母親に自分と自分の性を否定され、幼い時に殺されかけていました。
それぞれの性、それぞれの血、それぞれの運命を否定し否定され、八坂はマオの、マオは八坂の、ニシキは八坂の存在を頼りになんとかこの世界に繋ぎ止められています。自ら紡ぎ、張り巡らし、張り巡らされた呪いとう蜘蛛の巣の中でギリギリに生きる3人の哀しくも凄絶な生き方が描かれます。
自らの心の飢餓感を埋めるかのように他人に食べさせ続ける八坂の姿が切ないです。