うそつきあくま
」のレビュー

うそつきあくま

雁須磨子

磁石のSとNのような2人

ネタバレ
2021年8月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 今セール中なので上巻を無料で読めます。
人間誰しもが抱く感情がリアルに丁寧に深く描写されていて、心に沁みました。僕はこの作品の心理描写の仕方がとても好きで、読み応えもありました。
お互い好きだという気持ちはあるから、物理的に近くにいると体も重ねるし一緒にいたいとも思うし。でも、(主に宇郷さんが)相手への嫉妬心や羨望、劣等感のせいで本当に伝えたい事は伝えられず、お互いの心はいつになっても近付かないままで。でも僕は、最初から最後まで、余利くんは本当に宇郷さんを好きなんだなと感じました。なので、終盤に宇郷さんが失踪した時、余利くんがファイルの中身を読んで泣きはしたけど、その後意外とケロッと開き直っていたのには正直びっくりしました。でもきっとそういう部分が余利くんの本質で、宇郷さんを愛しているけど依存はしないというか、自分を彼に完全には溺れさせないというか。自律心があるなあと思いました。逆に宇郷さんは、影響されやすく傷付きやすいので、余利さんが近くにいると依存するし執着するし、ある意味同じ位の自律心を持ってないので、一回リセットする為に自ら離れる事を選んだのかなあと思います。離れたまま物語が終了すると想像していたので、4年後急に現れてthe endになったのはびっくりでした。
双方個人でいると性格もタイプも対照的な2人ですが、でもやっぱりお互い好きな気持ちは変わらないから、近くにいるとどうしても引き離せずくっ付いてしまうんだろうなあ。まるで磁石の様な2人だなあと思いました。離れていた4年間はきっと2人にとってお互いが成長する為の年月だったんだろうなあ。
独特な作風でしたが、心に響くとても素敵な作品でした。
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