殺しのアート
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殺しのアート

ジョシュ・ラニヨン/冬斗亜紀/門野葉一

(4巻)考察したら、1000文字にw

ネタバレ
2021年9月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1,2巻は、"ミスターどっちつかず"サムのめんどくささが爆発。まぁそれも愛と喪失への恐れが動機だったと吐露し、3巻以降は愛が止まらない状態で、安泰の4巻かと期待していたのですが、あれあれ?、ジェイソン、どうしたどうした……
ということで、以下、4巻の考察(ネタバレ)→
ジェイソン、いただけないですよね。明らかな倫理違反、FBIとしては明らかに誤った選択。
初めに読んだ時、サムの怒りや失望は尤もだし、サムの言ってることは正論なのに、なんでラストで謝罪するのか(俺はお前を裏切った、とまで言う)、ちょっと理解できなかった。
ジェイソンは開き直った上にヒス気味に見えるし。
でもたぶん「FBIとして」正しくないことは百も承知。ただジェイソンは、心の正義に誠実であった「ただの自分」の選択を悔いてはいない、その誠意を、他の誰でもないサムに理解してほしかった。
だけど、サムはジェイソンの「FBIとしての過ち」のみを以て、彼本人を断じ、彼個人を信用ならないと言い捨てた。
「"俺"は信用できますよ、どんな局面でも」再読するたび、このセリフは切なく重い。
このあたりは、ドクがうまく伝えてくれています。ドクとのやりとり、好きで何度も読みました。
ジェイソンの行動は確かに独りよがりと言える部分もありますが、失われた美術品たちへのあくなき情熱、それを前にすれば、自分のキャリアさえも捨てられる。キャリア(ルール)を守るために、真実が歪められ、美術品たちが闇に消えるのを見過ごすことは、ジェイソンには出来ない。少なくとも祖父の心情を正しく理解した後のジェイソンの行動はひとえに、この心の正義にのみ忠実であり続けた。
結果的にこのなりふり構わないジェイソンの情熱が、ドクの心をほどき、ベイビーに勇気を与えた。皮肉にも、ジェイソンが信頼に足る男だと、事件の結果が知らしめる。サムとの葛藤がありながらも、事件解決にひたむきなジェイソンを「ただの独りよがり」とはとても言えない。
大事なのは彼のキャリアじゃない、功績ですらない。祖父が誇ったものは祖父の功績でなかったのと同じように。
このジェイソンの、文字通り身を削るような決意を見くびっていたサムの気付き、翻意、謝罪。…うん、少し、納得。
それにしても「あなたに嘘はつかない」と過去何度も言っていたジェイソンが言った「二度とあなたに助けは求めない」、これがまた大きな障壁になりそう……
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