花丸漫画 恋の分量
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花丸漫画 恋の分量

斑目ヒロ

「好き」とは一体何なのか…

2021年9月8日
以前、フォローしている方のレビューを拝見して読んだのですが、別のフォローさん仰る通り、難しくて…。心に引っ掛かりを残しつつ、そのときに言葉でまとめられないと、何かを発したいのに、そのままになってしまう作品のなんと多いことか…。フォローさんのレビューを読ませてもらって、再読しました。
今回、トバリが感じる「冷たさ」に、ふと「金属」の冷たさを思い起こしました。金、銀、銅、様々に分けられる金属は、固体のままだと硬くてぶつかり合ってしまいます。でも、硬いままだと傷つけ合う金属も、溶かすと混ざり合うことも可能で、それぞれの分量によって、新しい色合いを持たせることができます。出来上がった色が気に入らなくても、分量の違いによる苛立ちや不安が生じても、そういったものは、お互いの柔らかさがあれば、注ぎ合ったり、補い合ったりしながら、お互いにとって心地よい色合い、風合いに寄せ合っていけるんじゃないかと思います。だけど、一方が固まってしまえば、それは混ざり合うことへの拒絶になってしまうんだなと、そんなことを考えました。
「恋」を「金属」に例えたとき、その「質」は様々で、果たして、口々に言う「好き」とは一体何なのか。硬い金属を溶かす熱は、どこから発生するのか。そもそも、溶かすつもりのないミツを抱き返すトバリの姿に、今、トバリが無理やりに柔らかくした自身で、冷たく固いミツを包んでも、いずれは、メッキが剥がれるように、ポロポロとこぼれ落ちていくのではないかと、そんな風に思いました。切なさではなく、痛々しさを感じる再読後です。
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