エロスの種子
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エロスの種子

もんでんあきこ

5巻のヒナと美冬がなんだか…

ネタバレ
2021年9月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 無駄がなく洗練されたセリフはテンポがよくて読みやすく、美麗な絵と登場人物の感情やその場の空気が伝わるような演出もうまくて、どの話からも独特のエロスな雰囲気を感じる良作だと思います。気になるのはちょっと5巻から方向性が変わった気がするのは担当編集者が変わったのかな?冬虫夏草のヒナも真珠の美冬にもモヤッとしました。二人共自分が酷いことされたからといって、関係ない他人に酷いことしていいことにはならない。ヒナは既婚者に手を出しまくった挙げ句刺されたと言っても自業自得だし同情はできない。散々苦しめた竜とさほどすれ違いもなくヒナの都合よくくっつきハッピーエンドなのもなんだか腑に落ちない。ヒナが愛を搾取しているようでいて、クズ男たちに搾取され続けていたことをわかっていても見ないようにしてきた心の傷と苦しみを吐き出す場面でもヒナに同情できなかった。義父の件は完全にヒナが被害者だけど、その心の傷が不倫していい理由にはならないし不倫の数が多すぎ。ヒナは自分の不幸な過去とは全く関係ない数々の他人(サレ妻)を不幸にしておきながら、不倫に対する反省や後悔やサレ妻への謝罪もないのが酷くて、ヒナにいくら可愛そうな過去や境遇があったにせよ同情が薄れ、竜とくっつき幸せになる展開にもただもやもやしました。母親に関してはヒナを守らなかったどころか責め、それに対して謝罪もなかったので謝罪しなくていいと思ったけど。少女で母娘が和解できたとこは良かった。ただやっぱりヒナが竜と幸せそうだと冷める。今後ヒナが不倫の因果応報や制裁を受け苦悩する部分が描かれることはあるのかな?そしたらまたヒナへの見方は変わるかもしれません。美冬に関しても憎しみはわかるけど2人目で捜査に協力して3人目は不可抗力で起きたことのほうが良かった。3人目を意図的に殺させたのは殺人教唆にはならないの?罪には問われたの?と、もやっとして終わりました。今まではハッピーエンドと言えないようなラストでも心にノスタルジィ的な情緒やせつなさ、登場人物の情念からにじみ出るしっとりとしたエロスが余韻に残る読後だったのに5巻の余韻はなんだかエロスよりモヤッとした感じの方が勝ってしまう残念な読後でした。
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